第18回新潟水俣環境賞作文コンクール優秀賞受賞作品の全文を掲載します!

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(写真提供:新潟水俣病共闘会議)
 
平成29年6月11日、標記作文コンクールの表彰式が環境と人間のふれあい館で開催され、3名の方々が優秀賞を受賞されました。同コンクールは、新潟水俣病被害者の「こんな苦しみは自分たちだけでたくさんだ。子や孫に同じ苦しみを味わわせてはならない」という切なる思いから、次代を担う子どもたちに身の回りの環境に関心をもってもらおうと、県内小・中学生を対象に毎年開催されています。作文テーマは「新潟水俣病」や「身の回りの環境問題」などで、今回は290点の応募がありました。なお、今回の優秀賞は下記のとおりです。
 

◆優秀賞を受賞された皆さんと作品テーマ

 
優秀賞3作文の全文は下記に掲載します!
 
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(写真提供:新潟水俣病共闘会議)
 

小学校5・6年生の部

 

心に響いた言葉「心も体も痛い」

本間夢菜さん(新潟市立横越小学校5年)

 四年生の時に、「阿賀野川物語」という学習で水俣病のことを知りました。あまり水俣病のことを知らなかったころは、患者さんの「けわしい表情」を見たとき、驚いて言葉が出ませんでした。でも、それがだんだん「どうしてこうなったのかな?」「何が原因なの?」と興味をもつようになりました。
 私は、五年生の八月に熊本へ行って、水俣病の患者さんのお話を聞いたり、交流をしたりしてきました。さかえの杜ほっとはうすや水俣病資料館で話を聞いたり、エコパーク水俣や百間排水口などで様々な体験をしたりしました。たくさんの方から水俣病に対する思いや考えを聞きましたが、共感することばかりでした。
 水俣病資料館では、語り部の緒方さんが、
「大勢の水俣病患者さんが、心も体も痛いと言っていた。」
と話してくれました。そして、
「こんな言葉が出るのは、全ての人が正直に生きなかったからだと思う。」と
言っていました。私もそうだと思います。
 チッソ水俣工場や昭和電工鹿瀬工場は、水俣病が発生したのは自分たちの水銀をふくんだ排水のせいだと気付いたのに、生産を止められるのをおそれて排水を流し続けました。すぐに排水を止めていれば、こんなにたくさんの人が水俣病にならずにすんだと思います。
 また、周りの人たちが水俣病についてよく知っていれば、差別やへん見はなかったと思います。そして、患者さんを心の面から支えてあげていれば、二重に苦しまなくてすんだと思います。そうすれば、患者さんやその家族も水俣病ということをかくさずに、堂々と生きられたと思います。
 全ての人が正直に生きていれば、水俣病という病気が起きても、こんなに大きく広まらなかったと思います。私はこれから正直に生きていきたいし、もう二度と公害病が起きないために、大勢の人に伝えていきたいです。
 私は、九月にも新潟水俣病患者さんのお話を聞きました。その患者さんは、「一度体験したことを話すということは、もう一度思い出さなければいけないからつらいです。でも、こうして話すことで、たくさんの人に悲しい気持ちを理解してもらえます。そういう人たちを見るとうれしくなります。ありがとう。」と
言ってくださいました。私は、「水俣病のことをしっかり勉強してよかった。」と思いました。
 水俣病を完全に治す薬はまだありません。だから、今でも大勢の方が苦しんでいます。体だけでなく「心も痛い」なんていう悲しい言葉を聞かないためにも、正直に生きていきたいです。そして、他の人や次の世代の人にもこの気持ちを受けついでいきたいです。
 


 

同じ事をくり返さないで

佐々木はるなさん(新発田市立外ヶ輪小学校5年)

 私は、六年前、福島県から新潟県に、ひなんして来ました。なので、水俣病の事も、公害という言葉も知りませんでした。
 ですが、五年生の秋、初めて「水俣病」「公害」という言葉を知りました。水俣病は、工場から川へ流れたメチル水銀を、食物れんさで人間が体の中へ取りこんでしまい、手足がしびれたりめまいがおこるなどという症状の出る病気でした。
 私たち五年生は、水俣病の人たちが、どんな体験をしたか、どんな気持ちだったかを、知るため、環境と人間のふれあい館へ行き、小武節子さんにお話を聞きました。
 そこで見た小武さんは、あいさつは笑顔で、いざ水俣病の話となると、真剣に話してくださいました。  私はそんな小武さんを見て、すごいと思いました。
 それは、語り部で何回も悲しいはずなのに、笑顔であいさつをしていたからでした。小武さんは水俣病に立ち向かい、これから、もう、犠牲になる人を増やさないために、様々な活動をしているそうです。
 水俣病は、その原因と関係のない人たちが被害にあいました。水俣病と同じように、六年前の、東日本大震災も関係のない、大勢の人が亡くなりました。その中には、六年たった今も立ち直れていない人たちもいます。
 私は、その人たちが小武さんのように、前を向いて、これからの人生を楽しく、くらしていけるようになってほしいです。一人の力ではむずかしいと思いますが、立ち直れない人を、一人でも助けられるよう、たとえ私一人でも、精一杯がんばりたいと思います。
 小武さんは差別や偏見にもあったそうです。一歩外へ出ると「うつる」や「にせ患者」などと言う偏見の言葉が耳に入ったそうです。私も間違った事を友達が言っていて、否定しようとしましたが、できませんでした。そのため、私も小武さんの味わった苦しみや悔しさが、想像できます。
 そのため私は、差別や偏見を絶対したくないです。そして、絶対にやってはいけないという事をこれからも絶対に忘れたくないです。
 五十年たった今も、苦しんでいる人がいます。そして、水俣病だと言い出せていない人もいます。私は、そんな公害をゆるせません、ゆるしてはいけないと思います。
 私は、新潟水俣病という公害を忘れず、家族や親戚に伝えて、一人でも、次へつないでいきたいと思いました。それと、同時に六年前の東日本大震災を忘れたくないと思いました。
 
  


 

中学校の部

 

今の私たちにできること

高橋あづ美さん(新潟明訓中学校2年)

 歴史の授業の中で新潟水俣病に関する映像を見た。患者さんへの偏見や差別が身近なところで起こっていたことを初めて知り、とても悲しい気持ちになった。それは周りの人たちの病気への誤解が招いたものだと感じた。
 私たちが苦しむ人々の気持ちを理解することで何か助けになることがあるのではないか、何ができるのか、それを知りたくて、新潟県立環境と人間のふれあい館に行った。新潟水俣病とは、メチル水銀を含んだ魚介類を長期間、多量に食べることで発症する中毒性の神経系疾患。命や健康を奪っただけでなく、差別、偏見が起こり、精神的にも苦しめられたということを知った。水俣病患者で語り部の稲垣さんの話を聞くことができた。稲垣さんは昔をなつかしむように川にいた蛍のことを話し、楽しい思い出を沢山聞かせてくれた。そして最後に大切なことを伝えてくださった。
 「無責任な行動はとらないで。」
 この言葉を聞いてはっとした。私は無責任な行動と聞いて「誰々さんから聞いたんだけど…。」という行動が頭に浮かんだ。日常生活で何気なく使っている言葉。意識せずに自分の責任でなく、相手に責任を負わせていたのだ。誰かから聞いた情報は必ず正しいものとは限らないし、大きな誤解を生むかもしれない。水俣病患者さんは周りの人の病気への誤解から苦しめられた。私は水俣病について知った時、なぜ間違った知識で患者さんを差別するのだろうと強い憤りを感じた。それなのに誤解を生むという点では同じことをしていると気が付いた。すでに起きてしまった新潟水俣病は決して消すことのできない出来事であり、患者さんの心の傷も決して癒やされることはないと考える。だから、これから未来を担う私たちが悲惨な出来事を繰り返さないためにも、無責任な行動をとらないことが私たちの使命だと思う。少し周りに目を向けてみると、自分を変えてくれるチャンスが多く存在していることに気が付く。一人一人が一歩一歩身近なところから始めていけば悲しい出来事は二度と起きないと考える。
 新潟水俣病が発生し、長い時間がたっており、どうしてもイメージするのが難しいと思ってしまう。しかし、私たちが友達と大きな声で笑い、ふざけ合ったりしているこの時間も水俣病に苦しんでいる人がいることを忘れてはいけない。また、私には新潟水俣病の学習を通して、よりいっそう強くなった思いがある。
 「医師になりたい。」
 水俣病には治療薬がない。しかし、苦しんでいる人がいる。私は患者さんの心に寄りそいながら一緒に治していくような医師になりたい。そして、大きな安心感を与えたい。
 世界各地で産業がめまぐるしいスピードで発展している一方、環境問題も起こっている。水俣病の出来事が何かのヒントとなり、少しでも苦しむ人が減ることを望む。私も水俣病を分かりきっている訳ではないが、家族に語り部さんの話や学んだことを話し、今自分にできる最大限のことをしたい。
 


 

第18回新潟水俣環境賞作文コンクール

  • 主催:新潟水俣病被害者の会、新潟水俣病阿賀野患者会
  • 後援:新潟県・新潟県教育委員会、新潟市・新潟市教育委員会、阿賀野市・阿賀野市教育委員会、五泉市・五泉市教育委員会、阿賀町・阿賀町教育委員会、新潟日報社、朝日新聞新潟総局、毎日新聞新潟支局、読売新聞新潟支局、産経新聞新潟支局、日本経済新聞社新潟支局、NHK新潟放送局、BSN新潟放送、NST、TeNYテレビ新潟、UX 新潟テレビ21、エフエムラジオ新潟、FM PORT 79.0

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